「技拓」で住み継ぐ、四季を味わう暮らし
時を経て、趣のある家 02
古賀邸:季節の移ろいを感じてのびやかに
古賀さんが住むのは、栃木県・那須の雑木林が広がる別荘地。2007年に土地を購入し、2017年8月に 延べ床面積17坪の平屋が完成した。10年の年月というなかで手放す選択も頭をよぎったというが、定年が迫ってきたとき、改めて愛犬と自身の行き先を考え、鎌倉からの移住を決めた。
「起伏のある地面で犬をのびのび歩かせたいというのと、自然が好きだから、小さい山小屋を建てておばあちゃんになるのもいいなと思ったんです。以前は散歩させるのにも気をつかっていましたが、ここは自由。木があって、小鳥が飛んでいて、季節ごとに日の光が違って、水も空気もおいしい。大きな石が苔むしていたり、積もった落ち葉の下でどんぐりが芽吹いたり、と自然のサイクルができているのにもほっとします」
「できるだけコンパクトに、壁紙や余計な装飾はなくし、この環境に合う自然な素材を使ってほしい」と依頼して建てた家は、技拓のセミオーダープラン「ちびスケ」の第一号に。“小さく住んで豊かに暮らす”という古賀さんの生活スタイルがそのままコンセプトになった。無垢のアカシア材の床とドライウォールで仕上げた壁に、引っ越してそろえた古い家具と旅先で出会ったアンティーク、前の家から持ってきた最低限の器や道具がないまぜになり、どれもしっくりなじんでいる。
「ピカピカしたものが苦手だし、この年式で、このデザイナーのものと決めてそろえるのも好きじゃないんです。そのときどき、過ごした時間で出会ったものをうまくおさめられたらいいかな」
朝5時に起き、愛犬と愛猫にごはんを食べさせたら、飼っている鶏の産んだ卵とトーストで朝食。明るくなったら愛犬と散歩に出かけ、午後は愛馬・グレースアローンのところへ。愛しい存在とともに、まるでのびやかに育つ木々のように過ごし、日々、喜びに満たされている。
(2017.8竣工)
撮影:上原未嗣
取材:増田綾子