施主取材

no.3 甘くて塩っぱい どようびの味 3/3

「どようびのお引越し」 瀬谷薫子

 食べることは、すべての源だ。瀬谷さんのところには、マフィンとスコーンを求めて多くの人が訪ねてくる。ご近所さんもいれば、車で遠くからやってくる人、沖縄のような遠方からはメールで宅配便を希望する人も。老若男女の垣根なく、おいしいものには人が集うのだ。「どようびをはじめてから、焼き菓子が人と人との間に立ってくれているなと感じます。話したこともなかった学生時代の知り合いが訪ねてきてくれたり、10年振の再会もありました。私はただ焼き続けているだけなのですが、そこに色々な人とが足を運んでくれて、ドラマが生まれるんです」と、ちょっと人見知りな瀬谷さんが、嬉しそうに話す。

 例えば、ある日はマフィンを求めてカレー屋さんのご主人が訪ねてくると、その日に限って品切れ。ご主人は手土産だけ渡して帰ると、試作でよければと瀬谷さんはマフィンの入った袋を握りしめ、その後を走って追いかけたり。するとそのお礼にと、また別のものを差し入れてくれたりするのだという。定休に試作をしていれば、近所の人が訪ねてくることも。店を開けていると、そこに様々な人間模様が垣間見られるのだ。平日は会社で働き週末に焼き菓子をつくる瀬谷さんにとって、そんな出会いもまた原動力なのかもしれない。

 「続けていくことは、浮き沈むことでもあると思うんです。」と瀬谷さんはいう。どんなに好きでも、同じことを続けるにはそれなりのエネルギーがいるもの。大好物だって、ずっとは食べ続けられないように。だからこそ瀬谷さんは、楽しさを忘れて沈まないための工夫として、定番メニューをもうけないのかもしれない。いつも同じものが買えるわけではないけれど、その代わりに新しいメニューがいつもあり、自然とお客さんが足を運んでくれる。「ずっと新しいものを生み出し続けるのは無理ですけど」と言うように、今だからできるこのスタイルが合っているのだろう。

 そんなどようびだが、6月いっぱいで井の頭公園近くの場所を離れ、西荻窪へ移転することになった。もともと、個人で篭って作れる場所を探していた瀬谷さんは、思い立ったら吉日、急に具体的に探し始めると良い物件を見つけ、ぱっと決めたのだった。駅から近い商店街のビル2Fに新しく開ける店は、ただいま準備中。「まずはキッチンを整えるので、オーブンを二つ買いました。これで本当にやるんだと思ったら、なんだかほっとしちゃって」と言うように、今は時間をみつけては準備に励んでいる。

 7月のオープンを目指し、まずは状況を見ながら毎週土曜日と、ときどき平日の夜にも開けられたらと思いを膨らませているところだ。「西荻の商店街にお店を出すのも、オンラインでなんでも買える今の時代、自分の足で歩いて目で確かめるような買い物も良いなって思いがあったので、意味があるなと思うんです」と瀬谷さん。とはいえ、こんな時代だからこそ、オンラインでの購入も本格的にスタートさせるのだそう。

 そんな話をしているうち、カボチャのスコーンは着々と生地が仕上がっていく。材料のカボチャは、水っぽいものからホクホクしたものまで個体差があるので、それに応じて加える水分量を調整するといい。隠し味はシナモンパウダーと、やっぱり豆乳、それと塩。ボウルは二つ用意して、主に粉を合わせるものと、カボチャやオイル、卵などを加えるものとで分けること。カードを使って切るように混ぜ、生地がもったりしてきたら徐々にひと固まりにしていく。あとは生地をボウルの中で分けて、上下に何度か重ねていくと、スコーン独特の層になった生地感が得られるのだという。お店に並べるものなら100gを切らないほどの大き目サイズにするのだが、家庭では、たべやすいお好みのサイズにすると良いかもしれない。

 生地ができたら、粉を振って棒で少し平らに伸ばして、カードで切り分ける。あとは焼き上がりを待つばかり。瀬谷さんに家でのお菓子づくりのコツを尋ねると、上手につくることより、気ままに楽しむことだそう。「好きな音楽をかけながら、ちょっと実験だと思ってやってみるといいのかもしれません。失敗することもあるけれど、上手くいけば苦労も全て善しとできる気がします」出来上がったカボチャのスコーンは、切れ目を入れてバターを挟んでも美味しい。
 梅雨まっさかり、冷たいコーヒーなどと一緒に、みなさんも。

スコーンのレシピ

A
薄力粉 260g
BP       8g
砂糖  50g
塩   小さじ1
シナモンパウダー 小さじ1/2

B
かぼちゃのマッシュ 70g
豆乳 80g
油  40g
卵  1こ

(作り方)
※オーブンは200度に余熱しておく。
① Aをあわせてふるう。
② Bを別のボウルに混ぜ合わせる。
③ AのボウルにBを加えて、カードで切るように混ぜる。
④ 粉気がなくなってきたら折りたたむようにしてまとめ、6等分にする。
⑤ 200度で13分→天板の向きを変えて5分ほど、焼き目がつくまで焼く。

・「マフィンとスコーン どようび」
東京・吉祥寺の井の頭公園近くで月に数回土曜日にオープンする、マフィンとスコーンの店。「おにぎりみたいな焼き菓子」をコンセプトに、冷めてもおいしい素朴な焼き菓子を作る。@doyoubi_muffin

※7月よりお店は西荻窪にお引越しとなります。詳細や新しい営業日についてはインスタグラムご確認のうえお越しください。