住む人日記

13.11.2023 Berlin

ベルリンは、黄色や赤に色づいた葉も散り始めいよいよ冬になろうとしている。9月の後半から11月の今くらいにかけて、人生で体験したことがないほど濃密に季節の移ろいを感じた。僕はあと3週間で帰国しなければならないが、これから長く厳しい冬が待ち受けていることを、ドイツ人と話していると感じる。
ヨーロッパの冬はどこの国も厳しいが、パリやロンドン、隣国のチェコで暮らしていた人々も一様にベルリンの冬はどこよりも心身に堪えると言う。サーマタイムが終わり街から徐々に色が失われていく今、街ゆく人々の気配からも冬の足音を感じている。

アパートを引っ越してからは、驚くほど生活も心持も変わった。ワンルームから1LDKになり、このテーブルにいることが増えた。本を読んだり、考え事をしたり、独りの贅沢な時間だ。東京での暮らしとは一変し、家具と器はみな備え付け(日本からいくつか持ってきたものもあるけれど)。今まで集めてきた物や拘りと距離をおくことで、自分自身が解放されていくようにも思える。

そして何より、それでも居心地がよく感じられるのは、質素だけれど質の良いアパートのおかげだと思う。いくつかの物件も見て回ったが、どれも日本にはない、「帰る場所」「暮らす場所」として充実した家ばかりだった。これから部屋に長く篭りがちな季節がやってくる。だからこそヨーロッパの人々は居住空間の心地よさを重んじるのかもしれないが、日本にもごく当たり前に暮らし心地のいいアパートが増えることを願わずにはいられない。

13.11.2023 Kazumasa Harada