住む人日記

3.11.2023 Berlin

ベルリンに来て1ヶ月が過ぎた。その間、寒暖差で喉風邪を引いて寝込み、ケータイ電話が不通になり、フランクフルトに行く高速鉄道では釈然としない罰金を払い、アパートの鍵を部屋に閉じ込めたりもした。そこだけ抜き出すとドタバタのようだが、写真のことばかり考えて過ごした穏やかな日々だったと思う。
色々な手助けに救われて、心地よい時間を体感している。

11月1日からは、予め契約しておいた旧東側のFriedrichshainの外れにある短期貸のアパートに引越した。ベルリンの中心地から少し離れ、日本で言うところの団地街の中を路面電車が通る、周囲を自然に囲まれたとても気持ちのいい場所だ。簡素な古いアパートや再開発で建てられた移民向けで築浅の集合住宅が立ち並び、たまに高層マンションなども垣間見える。西側とは全く違うそんな街並みからは、いまだに東西分断の名残を感じることもできる。

今ベルリンには、190ヶ国もの人々が暮らしているという。人種や宗教、肌の色、言語や文化も異なれば、そもそもこの街にいる理由も人それぞれだ。中東からの移民や紛争地域からの難民、留学生やアーティストもいれば、物乞いするホームレスや末期の薬物中毒者もいる。そんな日本では殆ど見ることのない景色や匂い、風のようなものに懐かしさのような、物悲しさのような、その正体をうまく言葉にすることはできないけれど、妙に落ち着く何かを感じるのも事実だ。

本来、社会には色々な人が存在している。そのことに蓋をし、見て見ぬふりをする。そんな違和感を東京では感じるのだが、ベルリンはどこかおおらかと言うか、どうにか共存を模索しているのかもしれない。

3.11.2023 Kazumasa Harada