住む人日記

住む人日記01

 新型のウィルスによる思いがけない2020年があっという間に過ぎ去り、新たに迎えたはずの年も2月になった。新刊を発行した昨年の4月にこのサイトもリニューアルを迎え、腰を据えて何か言葉を綴る機会と場所にしたいと思っていたが、緊急事態宣言下の慣れない生活や否応なくストップする仕事、そうした異様な状況に慣れるので精一杯なうちに日記を書くこともままならず、日々は過ぎてしまった。予定していた海外渡航とベルリンでの生活も当面はお預け、まだこの流れは数年続きそうである。
 
 ご存知の方もいるかもしれないが、冊子『住む人』は鎌倉のハウスビルダーである技拓と写真家の私、原田教正とが共同で2016年に創刊した読み物だ。(年1回の発行のため号数こそ少ないが、もう5年が経とうとしている。)今年は様々な状況を顧慮しながら、来年に向けて新刊の準備を進めていくとになるだろう。それと並行して、この場所で定期的に日々のことを記していきたいと思っている。久々なので、どんなことを書けるか不安もありつつ、20代最後の1年、これまで考えてきたことを振り返りながら、前を向いて言葉に残しておくには、いいタイミングかもしれない。

 ちなみに『住む人』は、ただ暮らしを取り上げる冊子というより、毎号のテーマの根っこは常に技拓が考える家づくりへの哲学に基づいている。人生の良い時も悪い時も、家はずっと私たちの見守る存在だ。だからこそ、建物としての家だけではなくその内側で暮らす人々を見守る存在として、そこで営まれ日常を様々な視点から掘り下げている。
 山あり谷あり、人生を永い目で味わっていくことが、家とともに暮らすことの醍醐味ではないだろうか。若者の間では家を持つことへの関心が薄れる一方で、暮らしへの熱は増している。多様なあり方から選択できる時代、マイホームを持つことが必ずしも昔のような意味を持つとは思わないが、関心を持ち、気が向くならいつかどこかに根を下ろして生きていくことも良いように思う。

 だから私も、ここでは家や暮らし、日常に至るまで色々なことを率直に書いて、みなさんに読んで頂けたらと思っている。どうかお付き合いください。

Sumuhito : Kazumasa Harada