「技拓」で住み継ぐ、四季を味わう暮らし

時を経て、趣のある家 04

三浦邸 :ささいな発見に心躍らせて

 「今日でよかったわね。どうぞ、こちらよ」
この日の青空のような晴れやかな笑顔で迎えてくれた三浦さんに、ごあいさつもそこそこ先導されて、さっそく室内へ。窓に囲まれた明るいLD。ひときわまぶしいダイニングテーブルの向こうから、窓いっぱいに咲き誇る山桜の花が目に飛び込んできた。昨日の春の嵐に耐え、まだ花びらを残してくれていた山桜。その儚(はかな)くも力強い生命力が、室内にいても伝わってくる。

 「ここに立って外を見ていると、なんだか飛び立てるような感じがするでしょう? まだ建築中のときに見に来たら、山に開けたこの土地がまるで舞台みたいでよほど気持ちよかったのか、子どもたちが踊り出しちゃってね……」と、当時を振り返る。
築46年になる三浦さん宅。ここは「技拓」が手がけた、記念すべき第1号の住宅でもある。

 「今の会長の白鳥さんと私の友人が知り合いだったのがきっかけなんですが、当時『技拓』で設計を担当していた納賀さんのお宅におじゃましてご自宅を見せてもらったら、まるでアメリカのホームドラマに出てきそうな雰囲気の家で。特別、外国の家に憧れていたわけではなかったけれど、これは感覚的に合うなと思い、土地探しから設計·施工までふたりにおまかせして、つくってもらうことにしたんです」
 
 崖下一面に広がる緑地に向かって張り出す位置にダイニングを設け、そこから一段床を上げたところにリビングをつくることで、LDのどこにいても視線が外へ向くようにつくられている。当然、キッチンや主寝室、階段も景色が主役になるように設計されていて、柱として使えるくらい立派な米杉を用いた階段両側の壁からは、家づくりに対するふたりの情熱が感じとれる。

 「毎日暮らしていると、もう46年も経つなんて思えないんだけど、引っ越してきた当初は小さかった木々が成長して視界が変わるほどだから、やっぱりそれだけ時が経ったのね」
 この時期は、夕焼けどきになると窓に反射する桜が美しいこと、光があたると水に挿しているサクソルムからぷくぷくとした水泡が浮き出てくること。そんなささいな発見に心を躍らせた46年間だった。新緑がまぶしくなる頃には、いつでも家族の中心にあるダイニングテーブルで、お孫さんの誕生パーティーを開催する予定。

 これからも、三浦さんは家族と、この家とまわりの自然とともに、新しい暦を紡いでいく。

(1975.1竣工)

撮影:山本あゆみ
取材:多田千里