「技拓」で住み継ぐ、四季を味わう暮らし

時を経て、趣のある家 12

青木邸:三世代で住む、風通しのいい家

「この家が完成したときに、いちばん上の孫がこんなことを言ったんです。『おばあちゃん、うれしいでしょ? 私と同じおうちに住めるよ』って(笑)」
 そう教えてくれたのは、謙吾さんのお母さま。青木家は、謙吾さん&陽さん夫妻と3人の子どもたち、そして謙吾さんの両親の7人が暮らす大所帯。3階建ての住まいに、3世代の7人がにぎやかに暮らしている。

 住まいづくりが動き出したのは、2013年のこと。
「子どもが3人になり、両親のサポートがないと仕事が続けられないという状況になって、せっかく土地もあるし、実家をみんなで暮らせる家に建て替えよう、ということになったんです」と、ともにアートディレクターとして都心の同じ会社に勤める謙吾さんと陽さん。
「以前、葉山にある先輩の家に遊びに行ったことがあって、そこが『技拓』の手がけた家でした。内と外がつながっているような感じが印象的で、落ち着きそうだなぁと思ったんです。築年数は38年ほど経過しているのに、デザイン的な古さはまったく感じなかった。年数を経た木の質感も味があって、家を建てるなら『技拓』にお願いしようと、そのときから決めていたんです」

 プランニングは、謙吾さんと陽さんが中心になって進めた。「僕からはあまり言わなかった」とは謙吾さんのお父さま。「とり壊した元の家は、40年以上前に僕が考えて建てた家だったから、さびしい気持ちもありました。でも、代替わりだからね」とほほ笑む。

 家族みんなが集えるLDKが実現すると、アートに造詣の深い謙吾さんと陽さんは、尊敬してやまないアーティストたちの作品や、子どもたちの描いた絵で、白い壁面を彩っていった。
「好きなアーティストの絵や写真は、よい気分でいるためのお守りみたいなもの。子どもたちの作品はのびのびしていて眺めていて楽しいし、正真正銘の一点ものというところが好きですね。次々に作品ができるから、新陳代謝しながら保管もして、老後にのんびり整理するのが楽しみです」

 クリスマス目前のこの日は、キャンドルを灯して、3世代7人でティータイム。クリスマスソングが流れるなか、北欧デザインの照明の明かりがやさしく食卓を照らし出す。
 3世代が気持ちよく過ごせるように配慮されたこの家は、いつでもつながりを感じられる風通しのいい場所。青木家が代々暮らすこの土地で、家族のぬくもりをまといながら、長い時間をかけて住み継がれていく。

(2014.8竣工)

撮影:川原﨑宣喜
取材:志賀朝子